■却下されたラスト■
本作は三幕物だ。
第一幕は、ゾンビが発生したフィラデルフィアで、主人公と家族が逃げ惑う話。
第二幕は、国連調査員に復帰した主人公が、イスラエル等でゾンビの調査をする話。
第三幕は、飛行機でモスクワに不時着した主人公が、ロシア軍に加わって赤の広場でゾンビとの大戦争を繰り広げる話だ。
単なる調査員だった主人公は、第三幕でなぜか凄腕のゾンビ・キラーとして活躍し、軍のリーダーになっていく。

主要な撮影が終わってから3ヶ月後の2012年2月2日、マーク・フォースター監督はパラマウントの経営陣にディレクターズ・カット版を公開した。
上映後、室内は静まり返っていたという。
パラマウント・フィルムグループの社長アダム・グッドマンは、前半は気に入ったそうだ。
だがディレクターズ・カットには、ホラー映画なら当然備えているべきサスペンスがなかった。
制作のブラッド・ピットは、マーク・フォースター監督に「一人だけでもう一度じっくり観させてくれ。その後、話し合おう」と告げた。

それから1ヶ月ちょっとが経ち、映画の公開日を2012年12月から2013年6月21日に変更することが発表された。
2012年4月、ブラッド・ピットに頼まれて、脚本家デイモン・リンデロフは編集し直した映画を観た。
リンデロフは、イスラエルを出発した後の展開をすべて変えたらどうかと提案した。
それはせっかく撮ったロシアの大戦争を捨ててしまうことを意味したが、なんとパラマウントの経営陣は賛成した。
映画の主人公が「世界を救う」症候群に陥ることを防ぐ彼のアイデアは、経営陣に受け入れられたのだ。

リンデロフは、『LOST』で組んだドリュー・ゴダードと一緒に脚本に取り掛かり、
10日後には新たな60ページを仕上げた。何年ものあいだ誰もが考えあぐねたエンディングが、こうして形になった。
イスラエルを出発した主人公は、ロシアではなくウェールズに不時着し、
広場で大戦争するのではなく、研究所の狭い部屋で試練に立ち向かうことになった。
1.9億ドルもの制作費を投入され追加撮影には、更に約2000万ドルが投じられた。