日本で配球の重要性が浸透したのは名捕手、野村克也氏の影響が大きい。「困った時は外角低め」など、野村氏が説いた「配球論」は野球の分析や見方で新たな視点をもたらし、ファンが居酒屋で「あそこの配球がまずかったな」などと野球談議に花を咲かせる土壌をつくった。

だが、計測機器の発達で打球方向や打球速度などあらゆるデータが測定できる現代では、もはや捕手たちが実地で積み上げてきた経験則や勘を基にした配球だけでは十分とはいえず、膨大なデータから対戦打者ごとに精緻な攻略プランをチームとして立案し、バッテリーにその遂行を徹底させることが重要だ。その努力を怠り、「リードが悪かった」と捕手一人に責めを負わせることがあるとしたら、その捕手のみならずチームの将来をも潰すことになる。