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「ありえへん。何で笑えるねん」。2014年7月28日。高校最後の夏を終え、仲間との記念写真に収まる中日・福永裕基内野手の表情は1人だけ笑っていない。これまでの野球人生でどん底にあたる日だ。 天理高3年夏の奈良大会決勝・智弁学園戦。幼いころから憧れていた甲子園への夢ははかなく散った。序盤から点差をつけられ、迎えた5回。三塁を守っていた自身の頭上を越える特大弾を放ったのが岡本和だった。 対して自身は5打数無安打。敗戦をしばらくは受け止めることができなかった。「写真撮影で親に『あんた笑いや!』と言われたのは覚えていますね」。そんな悔しさが原点。大学・社会人を経て、ようやく踏み入れたプロの世界。くしくも、初アーチは巨人・岡本和の頭上を越えていった。 あの日の自分には「この先また対戦することがあるから、『下向くな』と言ってあげたいです」。順風満帆な道ではなかった。ただ、遅咲きだっていいじゃないか。福永の一振りがそう証明してくれた。