オーナー会議では予想通り、資料について突っ込まれた。
春田は怒りを抑え、冷静を装って淡々と回答した。そうしなければ内心ではキレていた自分を抑えられないと思ったからだ。
途中退席を告げられると、今度は薄い仕切りの向こうからオーナー同士の議論が聞こえてくる。
春田がハッとしたのは、特徴的な広島弁が耳に飛び込んだ時だった。

「まあ、そうは言うても球界に入ってくれると言うとるんじゃけぇ。そんなにいじめんでもええじゃろ」

広島東洋カープオーナーの松田元だった。
この後、オーナーたちの了承を得てDeNAの横浜買収が承認された。
ここから広島とDeNAの知られざる交流が始まった。
球界に参入したDeNAは職員を広島に派遣して球団経営のイロハを学んだのだ。