私には忘れられないドラフトがある。
2006年高校ドラフト、巨人軍は投手なら駒大苫小牧の田中将大、野手なら愛工大名電の堂上直倫を指名する方針を決めていた。
最終的にチーム事情を考慮し、堂上直倫の指名を決定したのだが抽選は必至。
問題は外れた場合の1位をどうするかだ。
広陵高校の吉川光夫や瀬戸内の延江大輔ら左腕が有力候補に挙がる中、一人のスカウトが口を開いた。
東北、北海道担当の大森だ。
「絶対に光星学院の坂本勇人を指名すべきです。投手が欲しいのなら田中で仕方ありませんが、野手が欲しいなら最初から堂上ではなく坂本に入札すべきです」
一スカウトが球団の方針に異議を唱える異例の事態に他のスカウトからは嘲笑が漏れたのを今でも鮮明に覚えている。
スカウト部長が大森に問う
「坂本の何がそんなに凄いのか?」
坂本の評価はスカウトの中でも評価が割れており、堂上以上と評価する大森の主張は極めて異端だったのだ。