報道する側の善意の翻訳や忖度も。

 コンプライアンスとは難しいもので、たとえば森監督は試合後の会見で投手交代について質問され「そんなことはないよ。バカか。もういいわ」と吐き捨て、最下位に転落したことへの反応も「よかったね。そういうこともあるだろ」で済ませたケースがある。

 これらの言葉が報道されることがほとんどないのは、報道する側が善意の翻訳をしたり、忖度するからだ。取材対象者と取材者の間には緊張感とともに互いへの敬意があるのが理想だが、現状では難しいようだ。
それに対して「森監督や朝倉コーチの素顔は人情味あふれる人で、実はとっても優しいんだよ」といういい人説がある。

 筆者はそれを否定するつもりはないし、きっとそうなのだろう。しかし、それは論点がずれている。コンプライアンスの観点で問題になるのは、その人物の素顔ではなく「どの状況でどういった趣旨の発言をしたのか」だからだ。