バットを指一本分、短く持って打席に入った。亀井の決意がそこにあった。カウント0―1からの2球目、大竹の直球、ファーストストライクを強振した。
迷いがないから、打球は失速しなかった。バックスクリーン右に飛び込む1号ソロは、連敗脱出への号砲だった。

 一瞬、冗談かと思った。試合前ミーティングのスタメン発表。「7番、センター」で自分の名前が呼ばれ、雪辱の舞台がやってきた。
「昨日の今日だし『まさか』と。最後のチャンスとも思った」前夜は6回2死満塁、代打で1球も振らずに三振。
「代打で、プロとして、恥ずかしい、情けない打席だ」この日、指揮官のこのゲキで目が覚めた。変わらなきゃ―意識改革のスタートだった。

 練習中、大道のところに向かい「今日、まねをさせてもらいます」とバットを短く持つベテランに声を掛けた。
「やったことはないけど、何とかしたかった」と、プロ初の試みだったと明かした。小笠原には「ストライクばかり振ろうと思うな」と打席での心構えを教わった。
屈辱から一夜明け、生まれ変わって結果を出した。