8月22日の楽天戦。相手先発の藤平は5回無失点でプロ初勝利を挙げた。
この日ベンチスタートとなった平沢だが、指揮官の目には「ベンチにいても何かを学ぼうという態度が見られないし、出たら何とかしてやろうという気持ちが見られない。ボーッと見ているだけ」と映ったのだという。
目の前では平沢にとって数少ないプロの世界での年下の選手が快投を見せている。だからこそ悔しさ、がむしゃらな姿が見たかったのだ。近い将来、チームを背負うべき逸材だからこそ「周りを蹴落としてでも自分が上がっていく、そういう姿を出してほしい」と願った。

 シーズン終盤に命じられた2軍調整。それでも平沢は朝早くからウエートトレーニングを行い、空き時間を見つけてはバットを振った。
引退試合に向けて2軍施設で調整する井口が「本当に黙々と練習している。今はまだ僕がアドバイスをするときではない。自分自身でもう一皮二皮むけてほしいなという思いがある。もの凄く期待している」と目を細めるほどだった。

 三たびつかんだチャンスで故郷の空に架けたアーチ。平沢にとってきっと、大きなキッカケとなる一本になっただろう。